転落防止柵触れる人「いけずやわぁ」 笑いにくるみ訴え 全盲の落語家・桂福点さん

視覚障害者が駅ホームから転落する事故を防ぎたい。全盲の落語家、桂福点さんは鉄道会社や盲学校などで安全対策を訴える際、創作落語を披露する。切実な思いを笑いにくるんだ「落ちない噺」だ。その誕生の裏には、鉄道好きで落語ファンだった心優しい一人の男性の存在があった。
 創作落語「落ちない噺」。目の不自由な鉄道好きの主人公が、駅長らとの掛け合いを通して転落防止策を考える。主人公のモデルは、自身の落語のファンだった全盲の近藤恒久さん(当時40)。3年前の秋、駅のホームから転落し、特急にひかれて亡くなった。遺族や鉄道会社に話を聞き、現場の駅に足を運んで事故から半年後に噺が完成。これまでに10回以上、高座にかけた。
 兵庫県川西市生まれ。生後すぐ先天性緑内障で手術をしたが右目を失明。左目も盲学校高等部でほぼ見えなくなった。大学で演芸や音楽に親しみ、卒業後は医療機関などで音楽療法に取り組んだ。阪神大震災が起きた1995年の12月、障害者や被災者らに面白い話をしながら歌を披露すると喜んでくれた。「どんなときでも笑うことは大切」と気づき、翌年、桂福団治さんの門をたたいた。
 「落ちない噺」を演じるとき、近藤さんの形見の腕時計をひざ元に置く。噺には時々の世相や鉄道事情も反映する。「二度と転落事故を繰り返さないように」。そんな切実な思いを、笑いにくるんで彼と一緒に伝え続ける。


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